スーパーマーケット:いなげやでレジに並んだ瞬間、後ろに気配を感じる。オレの後ろに立つのは誰だ?!と振り返ると3人の人がいて、あ、これはオレの後ろに立つのは誰だ?!の騒ぎではなく、人の前に順番関係なく割り込んだのはオレだ!!というのに気がついた!!!

先頭に立つサラリーマンの若人を睨みつけたスナイパーの様な鋭い目つきにバツが悪くなり、急に老眼なのです。と具合の悪くなる視界の感じの演技は小劇場でなくても通用しなかったかもしれない。

私のいなげやのレジは左に商品棚を見て進むと右にレジがひとつ、もう少し進むともうひとつ、さらに進むともうひとつと3列ある。そのレジの並びの奥にそれぞれもうひとつずつレジがあるので全部で6つレジがある。

大体、レジに並ぶ先輩女性は通路にはみ出している。だから通路に誰もいないと、商品棚の後ろに人がいるなんて発想がなかった。

さっきはスナイパーと言ったがよくよく考えたら、あの眼差しは、実はレオタードを忘れてしまったが、怪盗キャッツアイの様な情報を見逃さない様な眼差しだったかも知れないと振り返る。その、ソレを向けたが、自分が悪かったようだ。
結局、その眼光は泪(るい:長女)に似ていたのか。どちらかというと瞳(次女)っぽかったのか。明らかに愛(一番若い三女)だったのか。サラリーマンにはどう見えていただろうか。
やはり、泪だっただろうか?でも末っ子気質だから愛っぽかったかも知れない。
もしかしたらレオタードを忘れたという設定を無視してレオタードを姿を、そうやって見ていたかも知れない。

そんなエッチなところもちょっぴりあるけれど会社では真面目がウリであろう。そういうキチッとしたサラリーマンが先頭だったので通路は通路としてあいていた。

はっ、まずいっ!と思って「あ、あの私(割り込んじゃった)?」とサラリーマンに言うと『あ、いっすよ。』と。え?やっ、優しい。あ、でもあなたがよくても後ろに並んでいる一筋縄では行きそうにない先輩女性の方々が。。。と思ったが、私が割り込んだ事には気づいていないみたいだ。さすがはキャッツアイ。私達2人が納得すれば特に誰にもバレず何も言われずに事は終わりそうである。
誰も私達が列を乱したなど知らない。2人だけの秘密。
何よりこのサラリーマンの『譲る』という美しい厚意を無駄にするのが、それって人間のする事か?と思い始めていた。
「あ、すみません。」と厚意を受け取り、目線を前に向ける為に落とした時、サラリーマンの買い物かごの中身が目に入る。

ちなみに私のかごの中は明日、あさま山荘事件のDVDを見ながら食べるポテトチップスと特売だったヨーグルトの2つ。
サラリーマンは1人暮らしだろうか。なんか総菜がいっぱい入っていたが。その中にヨーグルトも入っていた。私が選んだヨーグルトと同じヨーグルトが。
特売の数あるヨーグルトの中で同じ物を選ぶ私達。何とも言えないトキメキに、これは。もしや?と運命か?と。ついて行っちゃうぞ。とそんな気になってしまう。

前(元は前、今は後ろ)の買い物客と同じヨーグルトなんて事は珍しくない事だ!という意見の人がいるかも知れない。けれど私は、いっつも今日とは違う銘柄を選ぶ。今日はいつも選ばないヨーグルトを選んでいた。今日は、今日だけは、こっちにしよう。と選んだものが数分後に秘密を共有してしまうサラリーマンと一緒の銘柄だなんて、平成のアダムとイヴとは私達の事で、いいでしょうか。
なんだったら、サラリーマンがそっちのヨーグルトが好みなら私はいつだってそっちに替えられる。思い切って2つの買い物かごをひとつにしヨーグルトは2つもいらないね。とひとつ返したっていい。無くなったらまた買いにくればいいんだから。あなたが。あははははは。
と、酸いも甘いもオレ次第な妄想をしながらお別れの時は近づいてくる。
私は店員さんに呼ばれて次の順番の準備、レジの台の上に買い物かごを置いた。

神経が背中に集中する。このままでいいのか?一言言わなくていいのか?

聞いて欲しい。甘党の私がどうしてプレーンヨーグルトを購入するのか。それは酸いが入ったものへ入れる甘さは自分で決めたいから。
歯医者さんにチョコレートは虫歯になるからもうやめなさい。とドクターストップがかかる50歳手前な私が酸っぱいプレーンヨーグルトを選ぶ理由は。
酸っぱいヨーグルトにアイスをお好みで混ぜたいの。ビスコを納得するまで入れたいの。マシュマロの原型がなくなる程漬け込んで食べたいの。だからプレーンヨーグルトを買うのよ。
あなたの選んだヨーグルトは酸っぱさが強烈だから、だから私は違う銘柄をいつも選んでいたけれど。。。
今日から私は。
コレにする。
もしくは私にあの時、順番を譲ってくれた時の様に決定権を譲ってはくれないかしら。私お勧めのを一緒に食べてはくれないかしら。

職業も歳も出身地も実は国籍も分らない(出身地が分らないのと一緒でしょうか?)でも、もしかしたらこんな素敵な人、婚姻の有無なんて、出会ってしまったら、関係ないんじゃないでしょうか。

春だ。
冷静になれよ。よくない。春は、春には気をつけなくてはならない。
前にあやまちをおかしたのは春だった。その前も春だった。たしかその前もずっと、春だった。
暖かくなってくると無意識だろうか。開放感に操作されてしまうのかもしれない。

動物ではないか?自分をそう思う時は。実はある。
満月にはパソコンがよく固まる。触るもの触るもの焦げ臭くなっていく。むしゃくしゃする。。。動物として正しい反応かは分らないが丸い月を追いかけてよく分らない所にいた時もあった。
普段、奥手な私をマタギに変える春。
人々も白い皿が貰えると祭りに浮かれていく。どうしてこんなに白い皿が魅力的に見えるのか?春だからだろうか。シール配布が終わった後に0.5点足りず、自分のこれまでは何だったんだ。。。と思わず涙する人。ここまで集めた点数はもはや0点だ。
祭りが始まるといなげやでは白い皿を獲得する為に沢山のパンが売れた事だろう。逆にそんな気、さらさら無くパンを買う人もいただろう。

背中が爆発するか?!と思った瞬間、サラリーマンは同列の奥のレジへ呼ばれて私の横を通り過ぎ前へ進んだ。
すれ違う私達はもう目も合わせない。

春は終わった。
これで良かったのだ。

帰宅後、私は明日の為に買ったポテトチップスを我慢できずに食べてしまった。
次の日、あさま山荘事件のDVDを観る為の、改めていなげやへポテトチップスを買いに行ってもよかったが、出先からまっすぐ家へ帰った。
DVDを観ると、知り合いが出ていた。はっ!と我に返る。
昨日から一体自分はどうしていたのだ?

スナイパー、キャッツアイ、マタギ、自分。イヴ?

。。。一体何の話だ。
すみませんでした。