ペシミス人

静かな電車内で私は携帯に届いていた婚活パーティーのお知らせをそっと削除しようとしていた。いや?もしかしたら、こっそりもう一度開こうとしていたのか?
もはや、私にメイルをくれるのは婚活パーティ会社かユニクロヤマダ電機かになっていた。ユニクロヤマダ電機から来るのは大体そんな事もありそうだろう?婚活パーティ会社。これは以前参加したからくる。数年前、初めて婚活パーティというのに参加した。ローテーションで全員と話し私は13歳年下のバツイチの車の部品を売るショップ店長とカップルになった。私が彼を選んだ決め手は地味で大人しくて真面目な印象を持ったから。だった。洗濯機置き場の単水栓が緩くなり洗濯出来なくて困った私を最後まで見捨てず諦めず、ちゃんと直してくれている姿が、笑顔が、見えたからだ。でも誰の要望にも答えてしまう所が優しすぎる。って、悪い事ではないけれど、もう少し我が身をたててもいいんじゃないかな。とも思っていた。
最後に提出するエントリシートには3番までパートナー候補を書く事が出来たが私は店長を1番に書いて、2番と3番は、あとは書かなかったような気がする。
フリータイムで店長は話しの途中に歳の事をちょいちょい挟んできた。歳の差は気にならないか?私は気にならない。そう答えているのに、またしばらくすると歳の事を口にする。何か気に留めてくれてる気はするが、一回り以上開いた歳の差に抵抗を感じでいるようだった。多分、この人は私を選ばないだろうと思ったが。
カップルになった。というのに次の日からまた婚活パーティーのお知らせが届く。最後には盛大な拍手で祝福され若干、恥ずかしさに有り難迷惑しながら会場を後にした。スタッフの方々も喜んでくれたのにデータ管理では単にマーケットに過ぎなかったか。でも、自分の気持ちが決まっているなら、お知らせが来たって気にも留めずスッと削除できるだろう。私ならそれが出来るか出来ないかでいうと次の日もメイル来たら見ちゃってたから出来ていないだろう。話しが違うじゃないかと思うだろう。3人書けるのに1人しか書かなかったんだろう?と変に思うだろう。そうなんだ。そういう多面性があるんだ。
好きな男の腕の中でも違う男の夢を見る。のかと。世間様に嫌悪されたら、自分としては、不眠症なので、眠れるだけいいと思っている。そう言って、核心から遠ざかって訳の分からない様に煙に巻いてしまおうと思う。大成功なるか?
私、浮気はするタイプなのかなあ。キャラクター外かもしれないが、ちょっとした心辺りはある。かもなあ。でも、大丈夫。安心してほしい。心の法則は、それ以外は本当はいらない。上っ面だけ来たメイルを見ていただけ。と、誰からも求められていない現状で正にこれが夢見心地。と。今、一体誰が私の心の行方を心配してハラハラしているのか。と。もう。もう。もう、これ以上は聞かないでくれ。誰も聞いていないんだけどねー、自分で勝手に自発で言ってるだけなんだよねー。

店長は思った通り、人がよく誠実で、その優しさにいつかこの人を傷つけ倒してしまう。とビビり。
ダメにしてしまった。
店長も初めてのパーティーだと言っていた。

店長にもお知らせは届いているだろうか。いい人は出来ただろうか。優しい人だ。きっと私の心配など無用だ。
そしてこちらも婚活パーティーのお知らせは不要ではあるのだが。だが。念のため身分証の提示はいつでも可能な状態にしておこうか?そんな静かな車内だった。私が望む目的地は誰かとの元の鞘か。新たな未来か。いなげやか。。。

いなげやへ行く途中の停車駅でドアが開くと小学低学年男子が父親と入ってきた。鋭い勘で満席なのを察し、ドアが開ききる前に乱暴な足音をたて、座りたあいい!座りたああいい!と叫び、最終的には体を右へ左へ前へ後ろへと定位置と決めた場所で叫びながら上半身はグネグネと足踏みをした。向かえの座席前だった。静かな車内にそれは疾風怒濤の如く押し寄せた。さっきまでは紅茶さえあれば貴族の様な穏やかな気分だったのに。貴族になった事などないが多分こんな感じでいいだろう。もしも、私が貴族だったなら、これでいい事にする。そんな穏やかな時間だったのに大声にびっくりして婆やも姿を消した。
びっくりしたはずみで、思わず、ヤマダ電機のメイルの配信停止ボタンを押してしまったかもしれない。子供だからってやっていい事と騒いでいい場所がある!大事なメル友を失ったらお前っ!!慌てて確認をする。そう簡単には解除出来る様な仕組みにはなっていない。サービス業は、偉業である。よかった。冷蔵庫が壊れたのだが思い切りがついていない。買おうか、次にあったかくなる時期でいいか。明日、お得な情報が届くかもしれない。
メイルが来なくなる寂しさのあまりつい取り乱してしまったが子供だから仕方ない。と見られる時期は長くない。羨ましい。思った事を言えるのは財産だ。子供全員に与えられたものでもないので、少年よ羨ましいぞ。
自分の頃を思うと、小さな時から内気で大人に自分の気持ちを言った事など無かったと思う。暗くて子供らしくない。そう言われていた。同年代の子を見て、子供は無邪気でいいな。と思っていた。何となく諦めと一緒にいたが、私だって、その時、その時で叫びたい事はあった。
もう叫ぶには老けすぎた。喉も弱くなった。大声出すとすぐ枯れる。目立った反抗期もないまま中年になり、強烈に反抗する時期を一生の時間に平たくならしてなんとなく、万年、いまだ反抗期という感じだ。

少年は電車が動き出しても座る事を諦めない。ずっと座りたい旨を父親に訴えている。父親は特に何ともない感じだ。もっと興味を持ってあげてもいいのではないか。他人の家庭の事だが寂しい。
全ては私の考えだ。

急に騒がしくなった電車で貴族までのぼりつめた穏やかな生活を取り戻すには、少年を座らせるしかない。若いんだから立ってなくてはならない。と横暴な事は言わない。互いに人間として、平等な乗客として考えた時に自分は今、座っているが、あの少年の座りたいという情熱に負けない位の誇りを持ってして座っているのか?と思う。座れないと分かった時、あんなにグネグネ、グネられるか?と自分に問う(椎間板ヘルニアだが大丈夫か?)。
よく、分からない。よく分からないが、世代交代じゃないか?と世間様に非難されないのであれば、このポストを守りたい。
私は少年に席を譲りたくない!
このまま座って居られるのなら、たぬき寝入りだって。。。今、まさに深い眠りに入らんとした時、少年の前に座っていた私と同年代女性が立った。あぁっ!キツネにつままれた。御免なさい。恥ずかしい。しかし恥ずかしがっている場合ではない。少年は既に女の席に座っていた。父親はお礼を言ったのか。分からない。そんな疑問を吹き飛ばすかのように少年の隣で鎮座する私と同年代男性が立った。少年の勘の鋭さは父親譲りか?察しのいい父は鎮座男性が、立つやいなや自分はいい。と遠慮した。しかし、鎮座男は、あなたじゃない。そちらの方。と少年に席を譲った女性をさした。父親は察しが物凄く悪く、少年の察しの良さは母親譲りだった。と確信している間に女は鎮座の誘いを断る。それを見た父は空いている鎮男の席に座った(さっき断ったじゃないか?)。少年が父から受け継いだものは、空席対応への素早さだった。鳥だったらきっと立派なはやぶさになっただろう。

全席埋まった。

座席を獲得したい者、譲りたい者。
電車だからいいが、フルーツバスケットなら成り立たない。諦めるな、最後まで。
私は、応援する。誰を?
座席を巡る人間交差点。決断の早い人間達で完結したかに見えた。
しかし、私の中ではまだ終わらない何かがある。
私の出番は来なかった。ハッキリ言って部外者であり、たぬき寝入りしそびれてただ見ていただけだ。
何も始まっていない様にも見えるだろうが、私は私の生活劇として考えたい事がある。
それぞれ思いは報われたか?
言いたい事は言ったか?
座りたいと言って、座れたのか。
座る事を断ったのに座ったのか。
言霊の力はあったのかなかったのか。
もしあるなら反抗期に反抗出来なかった私の思いを聞いて欲しい。

いや、やっぱりいい。
もういい。
全ては手遅れだ。
今年ももう終わりじゃないか。
天下一品の日が来た(10月1日)。天一の日が来ると、今年もあと二ヶ月か。と思う。
ずっと気にしていなかったが、天一のこってりのカロリーが耳に入ってきた。
ちょっと、勇気がなくて私からは言えないが、もう大盛りは、私の場合は控えた方がいいと思った。
今年もあと二ヶ月弱。
いいのか。このままで。




まだ、メジャーもミニどんぶりも当たっていない。
天下一品祭り。明後日まで。