TATUYA 3

不倫をしてしまった。
鞄に磁石を入れている。という罪悪感とともに帰宅する。
全裸になって手に入れたばかりのスマホケースを鞄から出す。磁石を外す。広げる。右側にスマホ、左側に蓋の裏。
携帯に電源を入れる。入った。問題ない。パスワードを入力する。解除された。壊れていない。誰からもメイルはきていない。正常だ。
もう壊れるなら壊れてもいい頃合いだろう。
蓋の裏側にはカードを入れるポケットが付いている。
試されているのだろうか?その、優しさは憎悪にかわる。そして。懺悔もしている。
入れないよ。磁石ついてんじゃん。
言ってはいけない一言を呟いた。信用してるならカードを入れる信頼ではなく、本音を話し合えるそういう信頼である方向でも私はいいと思う。
けれど、だけど。
紙なら。
皮膚科の診察券なら。
ケースの優しさに応えられるのではないだろうか。
ポケットに皮膚科の診察券を入れてみる。しかし、皮膚科の診察券は一回り大きい。ここの医師は日本語ではない言葉でカルテを書く。医者としても一回り大きい。
A4なのか?B5なのか?名刺サイズとも違う。何というサイズなんだっ?!微妙な、微妙な大きさで。。。惜しいのに。
大きいことはいいことだ。という。大は小を兼ねる。という。
入らず、あてがったこの絶妙なはみだし具合を見ても言えるか?
格言だとか諺だとか。慰めならよして欲しい。皮膚科を選ぶ時、診察券のサイズを調べなかった甘さが崩壊の原因だ。でもまだ分からなかったから。まさか自分が磁石付きスマホケースにするなんて。
責めたければ責めればいい。
でも私だって言わせて貰う。ポッケに入れるものはあなたが決めるのですか?お望みのカードは何ですか?
パスモをあてがう。入る。ポイントカード兼大きなレンタル屋さんのカードをあてがう。入る。銀行のカード。。。入る。
皮膚科。入らない。

調子にのらないでほしい。。。

紙なら切る事だってできる。皮膚科にばれないように一回り小さく切ればいい。
切り幅の微調整に自信がないなら堂々とまっ二つに折畳んだっていい。紙なんだから。何も恥ずかしい事はない。今迄もっと恥ずかしい事を山程して来た。
私なら。
どちらもできる。
なんだったら一回り小さく切ったものを二つに折畳むというやり過ぎな事だってやりかねない精神状態だ。この人おかしい。と他の科に回したければ回せばいい。
キラキラしたスマホケースは私の希望だったのに、本音を言えば診察券をヤケクソに折畳んで入れるだなんて。そんな事をしたら、診察券としての100%の実力が出せない。そして結局ケースを100%いかしきれていない。私がアンチ磁石派なのに磁石付きのケースにしたばかりに。だ。

神よ。紙よ。
なんでこんなに悲しくて腹が立つ。更年期なのか(もう1枚診察券が増えるなら、今度こそ、今度こそ、サイズ)。
もういい。と服を着てTATUYAの元へ向かった。
もういい。と言って部屋を飛び出しても携帯なのだから、一緒に。すくって出た。
スマホケース相手に。。。
自作自演ってこんな感じか。結構寂しいぞ!

エレベータは相変わらず来ない。今日は一緒に待ってくれる男性がいる。同じ目的の為に一緒の時間を共有しているというのは戦友のようだ。
大きなレンタル屋さんは雑居ビルにあり飛び飛びの階に所在しているが、一緒に待っている時からこの人もレンタル屋さんへ行くのだろうというのは見当がついた。「なかなか来ませんね。」と話しかけたら気持ち悪いだろうか?
数分待ち、降りる5~6人を見送り、私は4階、戦友はレンタル屋さんの最上階を押した。その日、同郷、秋田のゆりちゃんにオススメして貰った映画を借りようと来ながら思った。同じ歳だが彼女は母の様な人だ。
私は成長期にした、バレーボールの故障が一生の怪我となっていて、いまだ治療をしている。バレーを辞める事ができてから、もう一生分のスポーツはやったのだからと。それには触れない人生を歩んでいた。今ならば問題になるであろう、殴るそして蹴るの暴こ、、、。御指導御鞭撻をたまわり、頂き、くださいました事もあり、スポーツに対してはネガティブな感情しかなかったが、ゆりちゃんから高校野球で地元秋田の金足農業が話題になっている話しを聞いて興味がわいた。甲子園までの来し方や、子豚の話とか、愛と可愛さが溢れて、もっともっと聞きたかった。これは氷山の一角で色々な事を教えてくれる。訳してくれる。こんな人が私の周りにいるなんて。と夢の様な事である。
秋田の山際、海側の田舎の方で育って、東京で25年以上生活しているが、都会の人に言ったら笑われるかもしれないが、秋田市にはいまだ憧れがある。方言も地元とは違う上品な響きがある感じがする。ゆりちゃんは秋田市の様に洗練された上品な人だ。
民さんは野菊、政夫さんはりんどう。そして、ゆりちゃんは秋田市。私はメグライア、、、。私のイメージはこうだ。
ゆりちゃんが薦めてくれた映画を借りに飛び出して来た。自分で勝手にムシャクシャした気持ちは楽しみに移行していた。

ここまではエレベータで4階へ向かう所。ここからは目的の4階へ降りてから。

店の作品位置を検索する機械で棚を確認するが、生憎地図が読めない。店員さんを呼んで探して貰う。店員さんはアクションの棚に行く。いやいや、地図が読めない客を前にしてるからってそっちでない事は分かる。ゆりちゃんがオススメしてるのだからアクションじゃないでしょ?と店員さんへ言っても、アクションです。と。何かの手違いだ。もしや、あなた、方向音痴?と。白い目をむいたが手渡してくれた題名は合っている。
ゆりちゃんへ慌ててメイルする。その映画はアクションか?と。返信は、アクションだ。と。女の人がかっこよくて憧れていたのだ。と。人は奥深い。そんな人だなんで思わなかった。聞けばハッピーエンドがいいという。それも、とても、意外だった。最終的に雨でずぶ濡れになっている様なのがいいんじゃないのか?と思っていたのは私の誤解だったようだ。と、4階で気付いた。
そんな未来へとエレベーターは運んで行った。映画という文化がないまま上京し、演劇の事に触れていた自分は劇場で観劇する事は頻繁にあってもあまり映画にはなじみはなかった。民さんや政夫さんの事は聖子ちゃんファンでもあり、また話題にもなった作品なので、耳には入ってきていた。
残念だがこれは自分の容量の小ささがそうさせているのだと思う。あまり多くの事が出来ない。演劇人で映画にも羨ましい程にいっぱい出て、そして観るのも好きという人は沢山いる。あ、容量とかの問題でもなくて実力?きっとそうか。出られないのは実力か。あはは。笑っている場合ではない(出さないか?出してよ。お願いよ。お願いします。本当に、お頼み申します。)。
自分の狭い視野で近くのものしか見ていなかったが、幸運な事に映画好きな人にこの映画がいい、あの映画がいいと薦められて、素直な私は(?)観る事をしている。その薦めてくれた作品で改めてその人を知る。映画を見るのはそういう面白さもあるなと思い始めていた。そういう事もあってゆりちゃんにも好きな映画を聞いたのだった。意外な一面を知った。

今は今とて戦友よ。あなたならこの瞬間一緒にエレベータに乗り合わせた私にお薦めしてくれるならどんな映画だろうか?人は奥深い。袖触れ合うも他生の縁。来世また会う約束の印にどんな映画をあなたなら薦めてくれる?
勇気を出して聞くか?無難にやめるか?
悩んだ時間はあっという間に過ぎた。エレベーターの待ち時間は長かったのに、乗ってしまうとエレベータはこんなに早い。どうして下で待つ時間はあんなに長いのか?不思議だ。そう思うと機嫌が悪くなってしまうが降りなくっちゃ。4階だ。お薦めを聞かずに戦友はそのまま最上階へ。最上階はアダルトだ。絶頂迄いってくるがいい。もし帰りのエレベータで一緒になったら私達は本物のご縁があるだろう。その時はお薦めを聞く。一体あなたは何を薦めてくれるのか。最上階へは行った事はないが、お薦めが上にあるのなら私は行ってみたいという好奇心を持っている。人間は欲深い。

ゆりちゃんから薦められたアクションは次の機会にして、他にも薦めてくれたのがあった。今回はそちらにした。それはコメディというジャンル。コメディも好きとは思わなかった。そうだったの?と。
カミングアウト。本性見たり。

それを借りる時が、会員カードは磁気異常。携帯のポッケにあてがった時、もしかしたらあの時に。。。いや、ゆりちゃんのイメージのギャップが?
磁気異常?


んな訳ない。

 ↓ ↓ ↓







































異常、異状、已上、維城、移乗、囲繞、委譲、詒譲、胃上、伊状、胃状、渭城、移譲、圯上、夷情、i嬢(荻窪・ホステス:伊藤)、いいじょ~(ハタ坊氏:談)、以上!

 ↓ ↓ ↓









































物持ちはいい方だ。中学生の時の服をいまだに着ている。その服を着た中2時代の写真がある。このカードは20数年使っていた。とうとうお別れか。
磁気の寿命がどれ位か分からない。磁石付きのスマホケースとは離していたが、でもどっちみち同じ鞄の空間だ。無理はあったと思う。そして、離して持ち歩いた意識を無にする如く。あてがった。
磁気異常の原因が寿命なのかスマホケースなのか分からない。
でも、磁石付きには手は出さないとしておいてすっかり寝返った軽い私とはこれをきっかけに終わりにする?TATUYA?

すぐに新しいカード作れるという事で作って貰う。だよねー。

新しいカードを渡させる時、古いカードはこちらで処分されますか?と聞いた。お願いします。なるべく即答を心がけた。しかしTATUYAは意外な事を言い出した。いいんですか?もうこのデザインのカードは手に入らないですよ?と。
お?!この私がカードのコレクターに見えたか?しかし。
なぜ待ったをかける?先に処分の提案をしたのはTATUYAだ。実は少しずつだが終活も考えて荷物の事もやり始めている。カード1枚と言えど自分の所有物になる。
考えてしまえば長年一緒にいた。いいのか?と問われれば迷う。処分してくれと言ったじゃないか。どうしてすんなり受け入れない。それは女心としては。。。嬉しい!!処分して。分かりました。では少し寂しかった。迷わせて欲しい。持って帰る?裏切った提案を望んでいた自分に気付く。店を移転してそんな心をくすぐるサービスも始めたとは。有難う。
そうね、捨てるならいつでも出来るもの。少し引っぱってみよう。お話もしてみよ。あ、でも使えないんですよね(私、何かマニアックな空気とか出してました??私が言わせたのなら申し訳ない)?。
ええ、まあ、そうですね。と何故か半笑い。笑顔とも言えるのか。でも何で?くそう。どうして自分は受け身なのだろう。来るもの拒まず去る者は追わない。そうやってあおるのであればあおられてもいい。
一瞬の戸惑いも、謎の半笑いも。何でかなあ?と思うけれど新しいカード作って貰って、そういうお世話をして貰うと実は彼と別れがたくなっていた(正気か?!)。
彼のあおりにのろう。

なるほど、持って帰ります。と言った。何が“なるほど”なのか全く辻褄が合わないが、TATUYAは一言。どうぞ。とだけ言ってカードを差し出した。私としては、かなりTATUYAに譲歩したつもりだ。持って帰らせたい。と思っている。そう感じ、そうして欲しいのならそうするよ。と。こちらのエゴだったら申し訳ないが、でも私の意志を180度変えさせてしまっておいて、それで、どうぞ。の一言で終わりにするなんて。最後になにか言ってよ。これオレだと思って。とか、なんか、これからも頑張って下さい。とか。これを受け取ったら私への対応は終わりなんでしょ(シフトは何時で終わる?)。
有難うございます。と受け取った。あなたに言ったんじゃない。今迄20数年間お世話になったカードに言っているの。

帰ろう。
いつもと同じ場所に使えなくなったTUTAYAのカードをしまう。出すことはあるのだろうか。思い出す事はあるのだろうか。
帰りの電車でスマホケースをじっと見る。やっぱり素敵だ。一目惚れしたトキメキはまだ続いている。
しかし、大きなレンタル屋さんのカードが使えなくなった事で、磁石以外にもうひとつ気になる事がある。
店先でどうしても欲しくなってしまったそのルックスは、生肉だった。
占いは嫌いではない。
生肉。

恐らく風水的に死んだ動物のそういうのっていうのは歓迎されない空気は感じていたが、『ここにあなたがいないのが切ないのじゃなくて、ここにあなたがいないと思うことが切ない。オウオウ。』という法則に基づけば『これが死んだ動物の生肉の写真だかイラストだかだから縁起が悪いのじゃなくて、これが死んだ動物の肉の写真だかイラストだかだから縁起が悪いんじゃないかと思うことが縁起が悪い。オウホフ。』という法則とイコールではないかと思う。
霜の沢山入った磁石付きの生肉のスマホケース。
恐らく大量生産だろう。
何処かにはいるであろう私とおんなじように一目惚れして購入した消費者が。
どうしてる?
でも、負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、信じ抜くこと、だめになりそうな時、それが一番大事。涙見せてもいいよ、それを忘れなければ。
ほかの人々は磁石の魔力、生肉の魅力に何か失ったものはないのだろうか。

考えすぎだ。
DVDを見よう。
何となくTATUYAの笑みを引きずりながら、帰宅する。遊ばれたんじゃないか?いや、思いっきし仕事だったろう。
家の鍵をカチャリと解除した瞬間。今コンビニで水を買った際だしたカードは磁気異常の方のカードだった。と気付いた。
店員さんは磁気異常の事は何も言わなかった。

スマホケースにTATUYAとのカードを入れようと靴を脱いだ。
服も脱いだ。



最後に何か大事な事を忘れているような気がする。matukoの意見を聞くにしてもwatchで時間を気にするにしても、演歌とコブシがfitするとしても、eikoの歌を聴くにしてもあと、サイズ確認MやLにしても、あとは、あとは、、、。

全部、Sが足りない。

さっき気づいた。
すみませんでした。


そして、来年するお芝居。観に来ない?
http://www.kirari-fujimi.com/program/view/564