近藤企画『更地の隣人』。無事に幕を降ろす事ができました。ご観劇頂きました皆々様、気にかけて頂きました皆々様、関係者の皆々様、有難う御座いました。土砂崩れで行方不明になった配偶者を探す男女のお話でした。土を掘って探しました。無線機で呼び掛けて探しました。CQ 、CQ、その後、お元気ですか?

稽古が始まった頃、お互いの名前を覚えるのに名前を呼び合うちょっとしたゲームをした。
なんて呼んで欲しいのかは自分で申告するのだが、新しい自分に生まれ変わりたい願望は常にある。高校デビュー、大学デビューがあるならば、近藤企画:更地の隣人デビューがあったっていい。なにか、印象に残る名前にしてやろう。そんないやらしい思いが一瞬よぎったが、考える間もなく申告の時間となり私はおばあちゃんが呼んでくれていた『まあちゃん。で。』と申告した。まあ、これはこれでデビューに相応しい初々しさがあり、いいのではないか?
おばあちゃんが呼ぶそれには、戦争体験をした半端ない辛抱強さからかもしれないし、生まれつきかも知れないけれど、人に対しての遠慮や謙虚さが出ている。一緒に暮らす孫の名を呼び捨てる事も出来ない程、気を遣う人だった。
休憩となった時、ガッキーと名乗った石垣直氏(社会援護局、メール便の男)がどうしてまあちゃんなの?と質問をしに来た。あれ?確かにどうしておばあちゃんは私をまあちゃんと呼んでいたのだろうか?考えてみると私の名前が昌子(まさこ)だからだ。
昌子だからだよ!アンジャッシュの児島氏程のキレの良さはなかったかもしれないが、まずまずキマッタと思う。ガッキー、ぐうの音も出ない。納得した様子だ?ああ。と答えたきり何も言わない。そして、あっちへ行ってしまった。聞いておいて興味が無さそうだ。時々、興味が無い事柄でもなぜか個人の事について聞いてくる失礼な人がいる。私も聞いて来た人に何を望むのか?という自意識を出してしまう悪い癖がある。
しかし、まあちゃん、という呼び名で。というのであれば、『ま』から始まる名前なんだろうな。位の察しはつくと思う。例えば、『駄々っ子ゴンザレス、です。』と名乗ったならば、どうして?そんな。と思うが、『まあちゃん』に対して何か疑問を抱くだろうか?と夜中にふと思い出す。高校の同級生に『みちこ』という子がいたが、『まちこ』と呼んで欲しい。という希望があった。みちこをまちこと三年間呼び続けた。名前の事を考える時、どうしてみちこはまちこなのか答えの出ぬ壁に今夜も眠れそうにない。

今回のカンパニーは出演者が少ないので関わる心が、自分の中の心が濃くその人達で占められていく。もしかして出演者が6人という演劇は自分の経験上最小人数かも知れない。とても一人一人が心に残る。
折ちゃんこと折笠富美子氏(繚乱スミエ役)、声のプロだ。ずっとズボンばかり履く私に、ロングスカートは履かないのか?と聞いて来た。色々理由がある内のひとつ、保存方法が分からないのだ。と答える。ピンチのついたハンガーを指差し、ああいうのにかければいい。と言う。ハンガーにピンチがついている。女としてのピンチをチャンスに変える時かもしれない。確かにそうだ。似合うと思う。最後にそのキーワードが来た時、今回のデビュー計画では女装をするというのも手だ。と背中を押された。女としての括りなら再デビューと言えるのではないか?1回目のデビューはいつだったのか?とも思うが、遅すぎた新人は忘れていたのだ。女ということ。女としてのピンチをこんな可愛い子に救って貰えた。そんなこと言われたら、、、。そうかなあ。と、そうだといいなあ。と表向きには世間話のひとつ。全く気にしていません。と流した素振りでもロングスカートが似合うといわれた!と内心穏やかではない。私は今後長いスカート履いてしまうかも知れない。本当に似合う様であれば、スケバンからやり直したい。4代目、麻宮サキは頂きだ。そう、まっぽの手先だ。
折ちゃんは作演出の平松れい子氏と同じ劇団の出身。三宅裕司氏の劇団にいた俳優さんだ。平松さんも今回は作演出だが、俳優さんだった。空いた時間、ふざけてエチュードを仕掛ける。乗ってくれてそして上手い。もうちょっと遊んで欲しいけれど、平松さんだって私にばかり構っても居られない。誰かに呼ばれてあっちに行ってしまった。台本は昨年手元に届いた。真面目な人だと印象を持つ。真面目な人だと思うとこの自分の隠しきれない能力不足の劣等ぶりを許してくれるのか?という恐怖と人見知りな性分もプラスして、ド緊張してしまう。初対面はライン電話だった。カチンコ人(前回ブログで気に入ってしまった)になってしまい、全く喋る事が出来なかった。画面は話しかけても何も反応しないこけしの静止画の様になっていたと思う。そんな話相手困っただろう。んんーーー。ライン電話の向こう側から演出家のうなり声を聞いたような気がした。そんな気まずい黒歴史を刻みながら稽古が始まるが、会って見ると稽古に物凄く没頭する。休憩を忘れている様だ。帰る時間もおかまいなしだ。この人天然だ。そう分かるともう怖くない。自分からも話しかけられる。とっても面白人間、優しい人だった。何気なく歌う鼻歌のクオリティーが高いことも私の地獄耳は察知している。出来る役者なんだと思う。私はミーハーではないが、そこに三宅裕司を知る人がいればどんな人?と聞きたくなるのが人情だろう。もう私からガンガン話しかけられる。聞いてみた。今までもこれからも尊敬する存在。と話してくれた。私はテレビで三宅裕司氏を初めて見た時の衝撃を覚えていて共演者のことも覚えていてその事を話すと。ああ!○○さん(←忘れてしまった)!懐かしい。と笑う。この人の過去も含めて愛おしいと感じた。こんなに気さくな人をも怖いと思ってしまう人見知り、何とかしたい。平松氏は最初のゲームで申告した呼び名、私をまあちゃんと呼んでくれる。嬉しい。
平松れい子氏の実態を知るまで私は平松れい子さんて人は怖い。なんて恐ろしい人だ。と思い込んでしまっていた。台本が早かったからだ。台本が早いことはとてもいい事で有り難い事だが、そんなにキチンとした性格では私の様な抜けている人間を許してはくれないだろう。と震えていたのだ。しかし、台本が早くったって近藤企画主宰の近藤強氏(旅本太郎役)の知り合いだから、きっといい人。大丈夫。近藤が優しいから平松さんも絶対に優しい人間だ。と言い聞かせて来た。近藤氏は実は(?)とっても優しい。そして大人だ。おやじギャグは笑えないが芝居は上手い。いい顔を何回も観てしまった。もっと観たかった。妻の旅本永遠江役の江理ちゃんこと根本江理氏との掛け合いを初めて観た時、思わず、上手ー。と舌を巻いた。2人共お見事。江理ちゃんは、初対面の時から上手い人だな。と思っていた。今回初めて会った人。実力派だが、お話をすると、ちょっと変わっている。旦那さんとの馴れ初めなどを聞くと、え?正気で?と一目置いたりもしたが、おかしくない。全て大真面目でやっている。天然をまた一人見つけてしまった。お芝居がとても好きなのが分かる。悪意のない実力派だが、私とは話が出来ないと思っていたみたいだ。話が出来ない相手。とはどういう事か詳しい事を聞く前に公演が終わってしまったので聞ける機会があれば聞いてみたいと思う。とても優しい人で何かあると江理ちゃんにすぐ聞いた。
近藤も江理ちゃんも青年団だが、影の支配者にもう一人青年団員が関わっている。藤瀬のりこ氏、ムーヴメント指導。初めて聞く凄い肩書。立ってる姿が尋常ではない。やっぱり違う。劇中の配置や動きなど色んな所に藤瀬さんは存在したが、私が藤瀬さんにつけて貰ったのはビューポイントの動き。ビューポイントの法則は説明が難しいけれど、劇を観てくれた方は覚えてくれていると思うけどマス目状にカクカク歩く人々の時、あれがビューポイントを取り入れたやり方で、近藤主宰はその先生だ。平松さんもその活動をやっている。この時、それぞれ歩きながらするポーズを色々考えたのだけど、私は歩くのに必死で一度もポーズが出来なかった。自分で考えた動作が藤瀬さんのエキスを入れると、全く別の印象になって私のポーズ達も折角カッコよくして貰ったのに。。。どういう訳かコンビニでもカクカク動く癖だけはついたのに。本番ではただの一度も。。。私のビューポイントはマイナスポイントに加算されていないだろうか。
さとうみち代氏が楽しそうに観てくれているから大丈夫だろう。さとうさんは『みち代』さん。『まち代』と呼んでほしい希望はなかったか?気がきかず御免なさい。大きな声で話してくれるので耳の遠い私も説明がよく分かった。ボタンをつけて持って来てくれる。シャツはインする。アウトする。帽子は深く被る。明日職場のロゴの入った(地盤研究所)作業着を持って来てくれる。元気でお洒落な衣装さん。
音響のせんちゃんは泉田雄太氏。せんちゃんとは昔から田上豊君(田上パル主宰、キラリふじみ芸術監督)のとこで一緒に舞台を作ってきた。ニコニコした笑顔を見ると心がふにゃふにゃになる。可愛らしい笑顔を見せるけど真面目な人。真面目が一番だと思う。せんちゃんの隣には同じブースで灯りを照らしてくれる照明の佐藤佑磨氏。初めて会った佐藤さん。初対面で私が血液型を聞いたことにちょっと警戒の心が見えた。私は人の血液型を聞くのが好きだ。欲望に負けて初対面の段階で聞いてしまった。私とした事が。人見知りのクセに、勢いで聞きに行ってしまった。少し様子を見れば良かった!どうしよう!と相手の反応で我に返る。らしくない事をしてしまった。ヤバい。ピンチ。ハンガー。ロングスカート。折ちゃん!パニックだ。何とか挽回しないといけない。音楽担当ののっぽのグーニー氏の所へ駆け寄り、佐藤さんに聞こえるように、のっぽのグーニー氏にも血液型を聞いた。佐藤さんだけに聞いているのではなく、ほらほら音楽担当ののっぽのグーニー氏にも聞いているからね!安心してね。という、丸腰表明のつもりだった。
グーニー氏は見るからにミュージシャンで、えっ?血液型?と、なんか、余裕があるのか突然目の前に焦りのあまり目を血走らせ現れた大女に驚いたのか、笑えるそして納得の反応で、ここにも天然を発見した。劇中の音楽は全部グーニー氏が作ってくれてどれもカッコいい。サントラは売らないのか?と演出に聞いたりした。全部カッコいい。そしてどうしてのっぽのグーニーなのか?それは聞いてもいいことではないだろうか。照明の佐藤さんとは最終的に仲良くなれたと私は思っているがどうかな?綺麗に照らしてくれたから大丈夫だよね。仕事だからか?そうなんだけど。。。佐藤さんも真面目だった。やっぱり真面目が一番だ。確認確認、確認の日々を過ごしていた。
準備が進んでいくと、葉加瀬太郎氏がやって来た。持っているものはバイオリンではない。椅子だ。テーブルだ。井戸だ。よく見ると葉加瀬太郎氏ではないようだ。美術の青木祐輔氏だ。陽気な人だ。落ち込んでいる時に話すと大した悩みでもないな。と持ち直す。陽気者。私の印象だが葉加瀬太郎氏も相当な陽気者だ。人相学的に何かあるか?元気になる。井戸を見る度、情熱大陸だ。
制作は青年団の看板娘、太田久美子氏、作品に対して色々言われる事はあるが、受付の人が親切で暖かくて柔らかくてとっても嬉しかった。と言われた。こちらも鼻高々である。太田久美子氏のなかなかの根性話あるけれど個人情報かな。秘密にしておこう。
新しい生き物もいた!舞台監督補助の河井朗氏、もう、出てくる話が新しすぎて目を開けたまま寝てしまいそうだった。風の時代に相応しい軽さと自由は私には一生手に出来ないものだろう。羨ましい、ルックスもカッコいい。賞も沢山取ってるんだって。河井氏の作品観てみたい。
バラシ(劇場の現状復帰)は楽日の翌日、搬出をして終わりになった。役者と舞台監督を一緒にこなした海津忠氏(繚乱日枝流役)。青年団の貴公子。
既存の舞台袖がなく、板で袖を作ってくれた。そこに小道具や衣装をおけるようにしてくれて、着替え場、出待ち出来るベンチも作ってくれた。本当に小さなスペースなのだが最大限の気遣いの詰まった隠れ家となった。着替えは上着の脱ぎ着的なものだけなので一緒の着替え場。えもん掛けの衣装は(ハンガーと言え)隣の人と少し重なる。衣装が隣り合った海津氏は私より自分の着替えが早く来るのだが、必ず私の衣装を前にしてくれている。恐らく私のただならぬテンパリ具合によく見えるように気を遣ってくれているのだろう。でも大丈夫。先に着替えがあるのだからお先にどうぞ。と、私だって余裕なふりを見せつけたい。いつ前にも出す?このタイミングが難しい。出来れば見えない所でさりげなくたまたま私、後ろです。という感じにしたいのだが、逆に気を遣わせちゃいそうな、負担になりそうならやらない方がいい。初日、そのままにする。2日目か3日目、やるべきかやらざるべきか少し迷ったが一度、海津氏の衣装を前に出してみた。お先にどうぞ。でもいつの間にかまた私が前になっている。そのままにする。3日目か4日目、海津氏の衣装を前にする。今日はお先にどうぞ。気づくとまた私が前になっている。もう一度前にするのはやりすぎか?でもやっぱり、お先にどうぞ。と海津氏のを前にする。楽日、海津氏の衣装を最後です。お先にどうぞ。とプリセットする。そうしたらいつの間にか海津氏の衣装は隣のハンガーではなく、隣の隣のハンガーへ移ってしまい、私の隣は何も無くなってしまった。重なる衣装は何も無い。家でも一人、衣装置き場の衣装でさえ私の所有物ならやっばりひとり。ショックのあまり、衣紋掛けをハンガーと呼んで調子を崩してしまった。でも折ちゃんの所ではハンガーと言っていた。今回のデビューは和洋折衷を使いこなせることに成功した。大成功!
今まで隣合わせていたのに、ひとつ向こうのハンガーにいってしまったのは今まで埋まっていた衣装があったが楽日なのでもう使わない物は片付けながらお芝居していた様で空いたからだと思う。広くなった衣装置き場に重なる物がなくなり、譲り合いはもしかして面倒臭かったか?と、心配していた、やらなければ良かった可能性も推測出来る。
メモする内容これで良かったかな?別のにしときゃ良かったかな?ぐわっはっはっはっ。まあ、いっか。一事が万事で全てこんな感じで全ての事に気が回る。すげえ、オレできねえ。

楽日翌日、バラシの日の夜、舞台監督として海津氏から全行程終了しました。のタイトルのメーリングリストが届く。今後のコロナについての注意事項も書かれていた。最後はごきげんよう。と締めていた。学習院スタイルで、近藤企画、更地の隣人は終わった。20歳若ければ、積極的に連絡したいところだ。それには、ここには書ききれない、神対応と言うか仏対応というか、神様仏様対応で助けて貰った数々があり、モテている。私から。私以外からも確実に相当、相当モテていると思う。
凄い仕事量だった。見事な判断力だった。感謝だ。有難う。
駆け足だったが、時間を隣合わせた?いや、同室だった人々を忘れないように書いてみたあ。

この公演中に田中邦衛氏が逝ってしまった。有吉弘行氏と夏目三久氏が結婚した。
田中邦衛氏の死については田上豊君(田上パル主宰、キラリふじみ芸術監督)と当日少し話し合った。名優だったこと誰も忘れません。

終活中だが、地盤研究所の作業着を貰う。白いシャツは作演出の平松れい子氏の私物だったがそれも貰う。ロングスカートを買う。チャンス付きのハンガーも買う。江理ちゃんが貸してくれたスチームアイロンも欲しい。

終活は続くが、生きることも続ける。
生きているのでは無い、生かされているのだ。
この意味本当はよく分からないけれど。
ただ明日も息をしていたい。
物が増えても気にしない事にする。
そして永遠江が息子に作ってあげようとしていたチーズとのりとしば漬けのサンドイッチ、作ろうと思う。美味しいと思う。

近藤企画、更地の隣人。無事に打ち上がりました。有難う御座いました。
もう少しで一週間たちます。遅くなりすみません。
袖裏の隣人にも大変大変お世話になりました。有難う御座いました。
ご観劇頂いた皆々様、気にして頂きました皆々様、関係者の皆々様有難う御座いました。お世話になりました。
ごきげんよう

有難う御座いました。