自治体から健康診断の受診券が届いたので町医者迄。診断メニューを未読で来てみたがそれを読まなくとも身長、体重、血圧、採血、尿と、私の経験からすれば全て想定内だ。知りたい事はそれだけ?と。余裕です。と微笑さえ浮かべるが、次の心臓を診てみましょう。との医師の意はどの程度の事だろう。聴診器か?心電図か?手かざしでいくか?何が来ても経験豊富な私はスムーズに対応出来るが先回り立居振る舞いで病院に入った瞬間、帰る事が出来る程の手際、察しのよさをアピールしたい。でもこの際なんでもいい聞いてくれ、俺のハートの叫びを。

この小さな町医者の採血室には石原裕次郎氏の写真とサインが町医者の名前入りで飾られていた。石原裕次郎氏とこの町医者との関係を身長、体重の計測ならびに採血と血圧を担当してくれた看護師さんに聞いてみた。
ここの医師であり院長が石原裕次郎氏が入院中に担当していた項目があり、それで。とのことだった。そして、でも、ここに診察に来るお母さん方は石原裕次郎の事を知らなくて、んふふふふふ。と話は続いた。何がおかしい。看板には小児科ともあった。お母さん方とは小児の母だろう。

自らを振り返れば昭和に生まれ平成、令和、20世紀から21世紀に変わるプレミアムな時も過ごし今日まで生きてきた。長かったような、あっという間だったやうなそんな時間だった。
子供の頃好きだったテレビ番組は『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』『夢で逢えたら』『コラーッ!とんねるず』『ハーフポテトな俺たち』『ヤンヤン歌うスタジオ』『ザ・トップテン』『夜のヒットスタジオ』『プリンプリン物語』等がある。生まれ育った地域は民放テレビ局が2つしかなかったので都会っ子に比べると番組の選択肢は少ないと思うが、これらを楽しみにやってきた人生だった。
どんどん大きくなり自分史上最大時は171センチあった身長が、ここ数年169センチになっている。時間は残酷かピークを過ぎ縮んでしまったのだろう。仕方がない。そんな事を踏まえ自分は古い人間であることに自覚はある。石原裕次郎を誰もが知っている時代から知らない人口が増えていく時代へと命を永らえながら流れてきた。

自分より年下であろうお母さんは、もしかしたら。

ボスと言えばコーヒーか?
ジーパンと言えばズボンしか思い当たらないのか?
スニーカーと言えばズックだと思っているのか?
、、、まさか。ウソだろ。どうして。と連発するが。
『石原』と言えば『さとみ』か?これは。。。これは、分かる気がする。
しかし逆に『さとみ』と言えば、どうしても『小林』と来てしまう。
でも少し冷静になると『浩太朗』と言いたい気もする。

現代のお母さん方について思案が思案をよび、原型がなくなって分からなくなっちゃったのは、この病院に診察に来るお母さん方は石原裕次郎の事を知らない。そして、んふふふふふ。この後だ、この後に「イヤだあ、歳がバレちゃう!」と心にもなくおどけてしまった自分の弱さに後悔を引きずってしまい、心が乱れてしまっているからだ。
考えてみれば年齢は電話で予約の時に51です。と伝えたではないか。おどける事なんかしなくてもバレている。いやバレるというのもおかしいが、逆に。逆に、先に弱点を見せる事で堂々と病院の門をくぐれる。というものではないだろうか?何だったら今朝はかった体重を名刺代わりにかますことだってできた。
おい、待て。年齢は弱点か?体重はダメージか?
心がざわつき健康診断には向かない風向きになって来た。無料という不思議で魅力的な言葉に誘われてきたのだ。
ただより高いものはない。このざわつきはプライスレスか。いや、本当にただか。税金ではないか?教えてくれよ、ドクター。私は今、どういう状況だ?
医師は調子の狂ったこの内心まで内診はしてはくれないだろう。税金とは別料金にて診察となるのか。
まずは目の前のことをこなそう。
無料で、いや、税金で心臓を診て貰おう。さあ、まくりあげるか?脱ぐか?そのままか?よく診たいから口から出せ。という診察法だったらどうしよう。
、、、この話題も近隣のお母様方は知らないだろう。
若さとは、年齢とは一体誰が決める?石原裕次郎の認知の深さか?人間ポンプに感動した数か?
いや違う。
ここ数年身長169センチとして生きて来たが、今さっきの身体測定で170センチの結果が出た。自己記録に及ばないものの前回より1センチ伸びている。昨日のズボンはもう履けない。こういったサイズ変化であるならば、成長期に関係しているのか、もしくは新陳代謝の衰えでそうなってしまったのかいささか判断に苦しむが、大きくなったモノが身長であるならば。
私は、私はっ!
わっ、わっ、わっ、若いっ!
声に出さなければ、いいだけのことだ。心で思うだけの事だ。
年齢は身長が伸びたかどうか。伸びたら若い(と言えないこともないのではないか?)!
石原裕次郎氏を心のボスとしても、『じゅんれんか』と言えば長渕剛だとしても、美味しいご飯にありつけたら、「星、mみっっっでshすっ!」とつい叫んでしまったとしても。
ちなみに石原裕次郎氏は紛れもなく昭和の大スターだが世代としては母の世代で、私が夢中になったのは刑事つながりで言えば仲村トオル氏だ。『ビーバップハイスクール』では不良だったが、いずれ『あぶない刑事』で刑事になる。先輩方が、悪いヤツは思い切り善い事も出来る。そんな事を教えてくれたがそれを正に現実として見せてくれた私のアイドルだ。
そんなトキメキを刻んだ私の心臓の今日までの集大成をこの医師に診断して貰おう。
どうする?はだけるか?脱ぐか?そのままか?口から出すか?
口から出す診察方法はこの人生で初となるが、そういった挑戦ができる喜びもある。もし、もしも口から出てきた物が心臓ではなく金魚だった場合、また来年、夏の風物詩としてこの時期にこの町医者を訪れよう。
今年も伊藤さんの健康診断の季節ですね。そう言って迎えてくれるだろうか。
でも不思議なのは最近お魚を食べた記憶が無いことだ。
いずれにしても全てはやってみなくては分からない。
準備運動的にお腹をぽんぽんしていると、医師はタイヤの付いたモニター付きの機械をガラガラと持ってきた。
これは聴診器か、心電図か、手かざし用の何かか、人間ポンプ専用に使う機械か?
機械に電源を入れたな。私はどうする?はだけるのか、脱がせるのか、そのままか、吐き出させるか。

さっきからずっと同じ事を言っているような気がする。
暑さにバテたか?
今年、今年でなくてもこの機械で健康診断をした人なら、どうやって心臓を診て貰ったか分かっちゃったでしょ。
それはエコーだった。
モニターに心臓が映し出される予定。
でも予定は未定。なぜか電源が落ちて映らなくなってしまった。
又後日書く。